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創薬支援システムの確立で日本発創薬を加速

 試験管内の研究で有効と見込まれ、臨床試験にまで到達した数多くの医薬品候補化合物のほとんどが期待された薬効が臨床試験では再現されず、市場に出る前に脱落し開発中止となっている。臨床試験は非常に多額の費用を必要とするため、臨床試験までの段階で、目的とする薬効を示す薬物をいかに正確に選定するかが、効率的な創薬のカギになる。

 わが国からの新薬創製を加速させようと、独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、大正製薬㈱、田辺三菱製薬㈱、杏林製薬㈱、㈱島津製作所など26社から資金拠出を受け、杉山雄一・東京大学大学院薬学系研究科分子薬物動態学教室教授を招へいし、4月1日、社会知創成事業イノベーション推進センター(土肥義治センター長)内に「杉山特別研究室」を開設した。

 杉山教授(64歳)は、長年にわたり分子薬物動態学研究に取り組んでいる薬学研究の第一人者で、世界的権威。エバート賞(米国薬学会最優秀論文)、タケル・アヤ・ヒグチ賞(第1回)、紫綬褒章などを受賞している。
 杉山特別研室では、理研の分子イメージング研究ネットワークの中核拠点である「分子イメージング科学研究センター」や、ライフサイエンス研究支援を推進する「オミックス基盤研究領域」と協力し、日本発の新薬創製を加速させる統合的創薬支援システムの構築を目指す。研究期間は3年間。

 創薬の初期段階で候補化合物を合理的に選択する新しい方法論を確立し、モデリングとシミュレーションを駆使した手法により、臨床試験に入る前に、ヒトに投与した時の各化合物の医薬品としての有効性を正確に予測するシステムの開発を行う。また、仮想的なヒトのデータを発生させ、ヒトを使った臨床試験を行わずに、ある特定の集団の薬物動態や薬効発現特性の個人間変動を評価する予測システムの開発も目指し、薬物間相互作用を避けることのできる医薬品、性差、年齢差、人種差など個人間変動や病態による影響を受けにくい医薬品、治療域の広い医薬品の開発につなげる。

 また、医薬品候補化合物の体内動態を安全性の保証される投与量で調べることのできるマイクロドーズ臨床試験を実施すべきかどうか、あるいはPET試験を組み入れるべきプロジェクトかどうかを判断する基準作りにも役立てていく。

 理研の特別研究室プログラムは、研究の活性化、研究成果の社会への展開などを目的に、傑出した研究者を招へい。原則5年以内の期間、企業などから受け入れる資金で特別に研究を推進するためのプログラム。

 第1号は、日本初の論理素子「パラメトロン」の原理の発見によりコンピュータ開発のパイオニアとして知られる後藤英一元主任研究員を招へいして設置した「後藤特別研究室」(1991年5月研究開始)。杉山特別研究室は、制度設置から9番目の研究室となる。
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